2011年10月16日は生涯忘れられない日の一つになることは確実だ。
そしてここで書いていることは、美談にするつもりも、自慢をするつもりも、ない。
ただ生きていたことに感謝したかったこと、それを活字で残しておきたかったのだ。
今まで生きていることが当たり前すぎて、そのことに無関心だった自分が、
この体験を機に、生きていることを心底感謝するようになった。
この日もグアテマラ全土は激しい雨に見舞われ、あちこちで土砂災害、床上浸水、橋の陥落が起きていた。
アンティグアからどうしてもシエラに戻らないといけなかった僕らは、宿のオーナーに
「今日もちょっと微妙だけど気をつけて」と言われながら、13時にアンティグアを発った。
アンティグアからの乗り換え地点。いつものチマルテナンゴについて、僕らはチキンバスを待っていた。
チキンバスは、現地人が普段利用するバスで、僕らもグアテマラにいるときは普段それを利用している。
しかし今回は日曜ということもあって本数が非常に少なかった。
そしてたまたま通りかかったちょっとだけ見た目の良い、チキンバスではない、シャトルバスに乗り込んだ。
料金が一緒だったこと、そして当然見た目が少しいいバスは「安全そう」に見えたのである。
バスが走りだして1時間後、生まれて初めての恐怖が僕を襲った。
「ぅごくなぁああー!」という怒号と共に、
いきなり乗客の中の8人が立ち上がった。
全員が拳銃を持っている。
脅すためか、一気に僕らに服従させる気持ちにさせるためか、
何人かが拳銃のグリップの部分で乗客の頭や顔を殴りつけた。
うずくまる乗客を尻目に、
彼らは狭いバスの通路の中を突き進んできて
入れ替わり立ち代り銃をつきつけてきては
「もう他にないんか!」と脅してくる。
ピストルで乗客を殴るのを見てから、事態の深刻さが理解できた。
これはバスジャックや。
いやこれはピストル強盗や。
やばい抵抗したら殺されるかも。
という映画のワンシーンのような場面が現実として目の前で繰り広げられた。
入れ替わり銃をつきつけてくるやつの、3人目のやつに
「おい、お前ほんまにないんやろうな?」ときかれながら
額にリボルバー式の銃をつきつけられた。
銃の先端が額にピタッと押し当てられる。
リボルバーは冷たい。無機質だ。
よく、死ぬ間際とかにめちゃくちゃスローモーションになったり、
過去がフラッシュバックするっていう話をきいたことあるけど、
銃つきつけられた時、すべての自分の目に入ってくる映像が、
遅くなっていることを感じた。
そいつの顔、息遣い。白のTシャツに青地のジャンバーを着ていること。
突きつけられているリボルバーの形、色。
そしてリボルバーの中に全部銃弾が装填されていたことが、
スローモーションで全部見えた。
途中、見えている映像と時を同じくしながら、すさまじい速度で思考が勝手に進んだ。
横にいる恭平が無事でありますように、
俺も助かりますように。
あかんあかんはよ終わって。もう全部あげるから。
母さんのスペアリブが食いてー。あれ世界一うまいねん。
親父にゴルフ教えてもらいてー。まだ打ちっ放し1回しか一緒にいったことないねん。
もうちょい親孝行したいねん。色々迷惑かけとんねん。
彼女と9ヶ月ぶりに会う予定やねん、俺。
会える日がめちゃくちゃ近いねん。あと6日で会えんねん。
どんだけ楽しみにしてると思ってるんや。向こうやて
久々に会うって思って新しい服買ったっていってねん。
それで一緒にサンフランシスコで中華食ったり、イタリアン食ったり、
寿司久々に食ったり、食ってばっかりやけどそのあとゴールデンゲートブリッジで
夜景みたり、おしゃれなバーで久々に酒飲んでゆっくり話したいねん。
まじで死にたくないねん!!!!!!!!!!
うー、バックアップ、日本に送るっていいながら結局やってへんかったな。
資料の作成今日やるって思いながら、明日でもええわって思ってたな。
あーおばあちゃんにも電話するっていいながら、忙しさ言い訳に電話して
へんかったなぁ。おばあちゃん俺の声きいたらめちゃくちゃテンションあがってくれて
いつもはよ帰っておいで!たくろーの好きな煮物作っておいてあげるから、って
言うてくれるんよなぁ。なんでやっとかんかったんやろう。
なんで、次の日が当たり前のようにくるって思ってたんやろう。。。
永遠のように感じた15分間のあと、犯人はバスを下車し、そのまま逃走した。
今まで生きていることに感謝したことはなかった。
あまりにも当たり前だから。
一日一日を大切にしようと思ったことなんてなかった。
これも、あまりにも当たり前だから。
でも、死はこんなにも自分の生活に身近で、
すぐ近くで待ち構えていることを感じた。こえー。
あー死ぬのなんて一瞬やし、あっと言う間や。
だからできることは全部しよう。
一日一日を完全燃焼してからおやすみをしよう。
今回みたいに後悔して死ぬのはやっぱり嫌や。
現在は盗難届けやカードの停止などは終わらせた。
親にも連絡したし、この事情は一切話さずおばあちゃんにも電話をした。
案の定帰ってきたら煮物を食べさせてくれるらしい。
それまでどうか生きていて。俺も生きて日本に帰るから。
今日も灰になるまで戦えたか。
気持ち引き締めて、心機一転。頑張ります。


























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